連載第5回は東横堀川水門です。
プロアシスト本社の近く、高麗橋すぐそばにある東横堀川水門をご紹介します。

東横堀川と東横堀川水門
プロアシストから南西の方角に向かうと、すぐ近くに高麗橋があります。
高麗橋が架かっているのが東横堀川、そして高麗橋のすぐ南、高麗橋と平野橋の間に東横堀川水門はあります。

東横堀川は大阪市内を流れる運河の一つです。
大川(旧淀川)が中ノ島で堂島川と土佐堀川に分かれますが、その土佐堀川の北浜から少し東で南へ分かれるのが東横堀川です。
中央区の船場・島之内の東端に沿って南下し、上大和橋を過ぎたところで西へ向きを変えてから下流は道頓堀川となります。
東横堀川にはいくつもの橋がかかっています。大川から順に葭屋橋(よしやばし)、今橋、高麗橋、平野橋、大手橋、本町橋、濃人橋、久宝寺橋、安堂寺橋、末吉橋、九之助橋、東堀橋、瓦屋橋、上大和橋と13の橋が架っています。
そして東横堀川水門は高麗橋と平野橋の間にあります。
大阪市主要部の地図にその位置を示します。
東横堀川に沿って阪神高速環状線が走っています。
そのためGoogleMapなどで見ても、阪神高速の下になって東横堀川はとてもわかりにくくなっています。

東横堀川水門の特徴
現行の 東横堀川水門は2001年から使われているもので、それまであった旧水門の役目を引き継いでいます。
東横堀川水門は閘門よばれる水門です。閘門とは、水位の異なる水面をもつ河川や運河、水路に船を通航させるための施設です。
南北に流れる東横堀川の水門の北側と南側の水位差がある際に、水位を一定に保って船舶の通航を可能にしています。つまり、船が水門内部に入り、上下の水位を調整して安全に航行できるようにする仕組みです。
2つの水門の間に閘室と呼ばれる区間を設け、水位を水門の外側に合わせて上下させることにより、水位に異なる水路に船を通行させることができます。

2つの水門のうち、高麗橋側の水門はラジアルゲート、平野橋側の水門はマイターゲートとなっています。
ラジアルゲートは円弧状の扉体と、それを回転させる軸で構成された水門で、ダムの洪水吐などに用いられます。高い水圧に耐えることができます。
ラジアルゲートは細長い板の両端に扇型の回転部が取り付けられたような構造です。
ゲートが閉じている時は板が水路をせき止めます。板を回転させ、水路の底に沈むとゲートが空いた状態となります。


次に平野橋側の水門(マイターゲート)を見てみましょう。
マイターゲートは左右2枚の扉で構成された水門で、閉じた時は合掌するような形状になるものです。


水門の開閉と船の通過
それでは実際に船が通過するところを動画で見てみましょう。
この動画は高麗橋から水門を見たものです。
実際には何分もかかかるので早送り動画になっています。
- 手前から船が閘門に進入します。手前の水門(ラジアルゲート)は、水面下にあるので見えません。
- 奥の水門(マイターゲート)は閉じられています。
- 船が侵入すると手前のまず奥側の水門(マイターゲート)が水面に上がり水路を閉鎖します。
水門が水面下に見えない状態で上昇するため、通行禁止を示すシャワーが両岸から出ます。
このとき水門間の水位は川の手前側と同じです。 - 2つの水門間の右の側面からポンプで水が供給され、水位が上昇します。
船も水位に従って上に持ち上げられます。 - 水位は川の向こう側の水位と同じになるまで供給され停止します。
- 奥の水門(マイターゲート)が開きます。この時水門の水位は同じなので水が流れることはありません。
- 船は水門の間を向こう側へ出ていきます。
同時に赤信号と水門を通過できないことを示す噴水が出ます。
これはラジアルゲートは動作途中から水面下に沈み見えなくなるため、
完全に開くまで船が通らないようにするためです。
(ラジアルゲートは完全に開くと、上を船が通過できる深さまで沈みます)
手前の水門が全開すると、船が発進し手前へ抜けていきます。
水質の浄化について
東横堀川、道頓堀川は自然の流れはあまりなく、以前は水質がかなり悪い川でした。
1995年に阪神タイガースが優勝した際、道頓堀にファンがダイブした時はそこはヘドロでした。そのため川に投げ込まれたKFCのカーネル・サンダースも長らく行方不明でした。しかし今は水質は大幅に改善されています。
この水質改善の役目も水門が担っています。
水質改善にはこの東横堀川水門と道頓堀川の木津川の間にある道頓堀川水門の連携プレーにより実現しています。
大川は淀川から分かれていますので元はキレイな水が流れています。
しかし、天満橋の上流側で寝屋川が合流しています。寝屋川は上流地域の下水普及率が不十分なため、雨水だけでなく生活排水が流入しているため汚れた水が大川に流れ込みます。
その水が東横堀川流れ込むと東横堀川、道頓堀川は汚れてしまいます。
そこで通常は船の通行時以外は東横堀川水門を閉鎖することにより、汚い寝屋川の水が流れ込まないようにしています。
しかしこれだけでは、水の循環がなくだんだん汚れてしまいます。
ところで大阪湾には塩の干満があります。月が満月と新月の時は満潮時の潮位が特に高く大潮と呼ばれます。大川は安治川、木津川を介して大阪湾に注いでいますが、大潮の時は川の流れは逆流し、大川の水が寝屋川に流れていきます。
この時、東横堀川の入り口にあたる土佐堀川の水は寝屋川の水が混じらないキレイな水となるため、この時に東横堀川水門を開放するとキレイな水が流れ込んできます。そして道頓堀川の水は道頓堀川水門を介して木津川に放出されます。この作業を大潮ごとに繰り返すことにより水質が良くなっていくわけです。
水門の管理棟の中に監視室があります。
監視室からは水門の状態や監視カメラの状態をみることができます。
また、東横堀川水門だけでなく、連携する道頓堀川水門の状態や監視カメラもみることができます。

旧東横堀川水門
1978年に東横堀川河川浄化用水門として完成、2001年の現在の水門完成後、水門のゲートは撤去されましたが、操作室などがあった管理施設と連絡橋、ゲートの支柱が今も残っています。

毎年6月中旬から7月中旬にかけて1か月『eーよこ逍遥』というイベントが開催されています。(東横堀川水辺再生協議会)
この時に東横堀川水門特別見学会も開催されています。
この時は監視室の見学や、水門を実際に目の前で動かすところを見ることができます。
水門に興味のある方は一度見学されてはいかがでしょうか?
東横堀川水門と桜
今は季節が違いますが、春先の桜の季節には水門横の公園に桜が咲きます。
高麗橋からは水門と桜の景色を見ることが出来ます。

船の通過は一日に何度かあります。しかし橋を渡っている時に、気にしていないと気づかないでしょう。
もし高麗橋を渡ることがあれば、水門を見て船がいないかを確認してみましょう。
今回紹介した場所
東横堀川水門